防災無線の適切な使い方

 阿久根市長の防災無線の使用について、電波法に抵触する恐れがあるとの記事が掲載されました。

 鹿児島県阿久根市竹原信一市長(50)が5日夜と6日早朝、「私を陥れる」などとの報道批判や自身の政策を訴える録音テープを市の防災行政無線で放送した。市議らは「無線を悪用し、選挙演説しているようなものだ」と批判。電波の目的外使用を禁じた電波法に違反する可能性もあり、総務省九州総合通信局熊本市)は「情報収集中」としている。

 市関係者によると、放送は約4分20秒。竹原市長は4日朝、市総務課にテープを手渡し、放送を指示。5日は午後7時半過ぎに、6日は地区別に午前6時過ぎと同6時50分の2回に分けて流したという。
毎日新聞:阿久根市長:防災無線で報道批判 電波法違反の可能性も

 電波法で定める目的外使用の禁止とは、以下のとおり。

電波法
(目的外使用の禁止等)
第五十二条  無線局は、免許状に記載された目的又は通信の相手方若しくは通信事項(放送をする無線局(電気通信業務を行うことを目的とするものを除く。)については放送事項)の範囲を超えて運用してはならない。ただし、次に掲げる通信については、この限りでない。
一  遭難通信(船舶又は航空機が重大かつ急迫の危険に陥つた場合に遭難信号を前置する方法その他総務省令で定める方法により行う無線通信をいう。以下同じ。)
二  緊急通信(船舶又は航空機が重大かつ急迫の危険に陥るおそれがある場合その他緊急の事態が発生した場合に緊急信号を前置する方法その他総務省令で定める方法により行う無線通信をいう。以下同じ。)
三  安全通信(船舶又は航空機の航行に対する重大な危険を予防するために安全信号を前置する方法その他総務省令で定める方法により行う無線通信をいう。以下同じ。)
四  非常通信(地震、台風、洪水、津波、雪害、火災、暴動その他非常の事態が発生し、又は発生するおそれがある場合において、有線通信を利用することができないか又はこれを利用することが著しく困難であるときに人命の救助、災害の救援、交通通信の確保又は秩序の維持のために行われる無線通信をいう。以下同じ。)
五  放送の受信
六  その他総務省令で定める通信

 本来有事や大規模災害のためのシステムであり、その目的においては騒音公害は当然許容される性質のものです。
 また、法令の定めによるところ以外の警察・消防事務組合・選挙管理委員会教育委員会等の区市町村長部局以外からの依頼により通報するものも、厳密に言えば目的外使用にあたります。選挙管理委員会からの依頼で選挙の投票を呼びかけることや、教育委員会からの依頼で教育委員会が主催する行事への参加者募集のお知らせを呼びかけることがこれにあたります。

 もっとも、市が広報するもとして、九州北海道一部自治体では訃報連絡に使用しているところがあるようです。なかには、関東の一部ではイルカ救助に関する呼びかけが目的外使用にあたると判断したことを断ったことを後悔しているケースもありますが、これは適切な使用かどうかの判断の難しさを表すケースかもしれません。

 ちなみに、阿久根市防災行政無線管理規則を読んでいて気になったことがあります。

(防災行政無線の利用申込み等)
第16条 防災行政無線を利用しようとするときは,その利用者は,防災行政無線通信依頼書(別記第1号様式。以下「依頼書」という。)に必要事項を記載し,無線管理者に申し込まなければならない。ただし,緊急やむを得ない場合は,適宜な方法で申し込むことができる。
2 無線管理者は,前項の規定による申込みがあった場合において,その内容が第7条の規定に違反しないと認めたときはこれを承認し,無線担当者へ回付するものとする。
3 無線担当者は,依頼書を受理したときは,防災行政無線通信受付簿(別記第2号様式)に必要事項を記入して処理しなければならない。

 防災行政無線通信依頼書を見ると、放送希望日の前週の水曜日までに提出しなければならないことになっています。緊急かつ、やむを得ない場合以外には、少なくとも御用納めの日(平成21年12月28日)までに、担当職員は依頼書を提出しなければならなかったかもしれません。