文化財は燃える

 31日午前5時45分ごろ、島田市河原1、無職、立林健一さん(73)方から出火。立林さん方の木造2階建て住宅と倉庫のほか、隣接の木造2階建て店舗兼住宅、倉庫の計4棟延べ約285平方メートルを全焼した。また鉄骨2階建て住宅と倉庫が半焼。けが人はなかった。島田署などによると周辺は旧東海道・島田宿大井川川越遺跡として国史跡に指定され、半焼した住宅は川越し人足の詰め所「一番宿」を再現していた。同署が出火原因を調べている。

火災:島田で4棟全焼 大井川「一番宿」再現住宅も半焼 /静岡(毎日新聞)

 被害を受けた4棟の所有者の方にお見舞い申し上げます。また、風の強い早朝の火災の消火活動に当たられた消防関係者の皆様、年末年始の忙しい中に火災後の片付け等に尽力された方々、本当にお疲れ様でした。

 火事が起きた後に防火体制はどうなっていた、という指摘が市当局や文化財保護担当(隣接自治体を含め)に質問や問い合わせがあるかと思います。現実問題、重要文化財や指定文化財は数多くあり、そのすべてに延焼を食い止める消防設備が備わっているわけではありません。今回は隣接する一般家屋から火災が発生していますが、当然ですが隣接する家屋にまで国、地方自治体が防火設備を設置・維持管理することはありません。

 もちろん防火体制をしっかりして欲しいですが、文化財は燃えるのを前提に考えておく必要があるのかもしれません。復元が可能となるような図面、写真の整備については、重要文化財や指定文化財の解体修理時に整備できればよいのですが、完全に復元できるような調査は難しいです。

 修理箇所以外まで調査することは、修理目的以外での税金(補助金)の使用となるからです。

 では、一体どうすればいいのか、というと市町村等の地方自治体の自主努力しかないのが現状かもしれません。

文化財保護法
地方公共団体の事務)
第182条 地方公共団体は、文化財の管理、修理、復旧、公開その他その保存及び活用に要する経費につき補助することができる。
2 地方公共団体は、条例の定めるところにより、重要文化財重要無形文化財、重要有形民俗文化財重要無形民俗文化財及び史跡名勝天然記念物以外の文化財で当該地方公共団体の区域内に存するもののうち重要なものを指定して、その保存及び活用のため必要な措置を講ずることができる。

 国重要文化財については、保存計画、活用計画を作成していますが、建造物については保存計画策定時に復元を前提とした調査の実施し、毀損時への基礎資料整備をさせてもらえれば、と思うことはあります。(保存計画策定時の国庫補助対象経費としてどの部分が対象となるか難しいところがあります。調査そのものは可能ですが、誰が費用を負担するのか、という点について話し合う必要があります)


 新聞記事の話に戻りますが、今回火災にあった「一番宿」について、火災後にどのような建物を建てるのか、実際に所有者の方が建物を建てるまで時間を要するかもしれません。新しく建物を建てる前に、文化財保護、観光、都市計画、いろいろな側面から協議を重ね、もっとも大事な所有者の意向を伺い、国、県、市民の方々への説明と理解を求めることが必要となるからです。
 文化財担当者としては、文化財の復元の可否や復元方法について、検討を要する事案であります。