登録有形文化財の登録の抹消

文化財保護法
登録有形文化財の登録の抹消)
第59条 文部科学大臣は、登録有形文化財について、第27条第1項の規定により重要文化財に指定したときは、その登録を抹消するものとする。
2 文部科学大臣は、登録有形文化財について、第182条第2項に規定する指定を地方公共団体が行つたときは、その登録を抹消するものとする。ただし、当該登録有形文化財について、その保存及び活用のための措置を講ずる必要があり、かつ、その所有者の同意がある場合は、この限りでない。
3 文部科学大臣は、登録有形文化財についてその保存及び活用のための措置を講ずる必要がなくなつた場合その他特殊の事由があるときは、その登録を抹消することができる。
4 前3項の規定により登録の抹消をしたときは、速やかに、その旨を官報で告示するとともに、当該登録有形文化財の所有者に通知する。
5 第1項から第3項までの規定による登録の抹消には、前条第2項の規定を準用する。
6 第4項の通知を受けたときは、所有者は、30日以内に登録証を文部科学大臣に返付しなければならない。

登録文化財が抹消となる場合に想定されるケースは次のとおり。

  1. 国が重要文化財に指定した場合
  2. 地方公共団体有形文化財(建造物や民俗)に指定した場合
  3. 火事や災害その他によって消滅した場合
  4. その他特殊の事由

 国重要文化財地方自治体による指定文化財への格上げされた場合は、文化財としての保護はそのまま継続されますし、支援策もより充実します。
 火事や災害によって消滅した場合、建物そのものがなくなってしまうので登録抹消となります。


 最後のその他の特殊事由。
 ここ数年、特殊事由として「解体」が増えてきています。また、解体計画に伴い市町村が指定することになったという例もあるかもしれません。元々『ゆるい活用』を念頭としていても、『厳しい保護』が可能な物件であれば、指定文化財として生き残れるほうがいいかもしれません。

 しかしながら、やむを得ず解体されるケースが後を立たないことを見ると、文化財保護法第60条第2項に基づく、地方公共団体を管理団体に指定を文化庁は適用できない事情がありそうです。


 例えば神奈川県湯河原町の旧天野屋(登録抹消済)のような旅館の場合、地方公共団体が管理者になり登録文化財を活用し続けるのは困難という判断だっと思われます。現在起きている事案として、静岡県下田市の南豆製氷のような倉庫も、活用が難しいケースかもしれません。

 

 指定文化財の概念に捕らわれず活用を図ることが制度設計にあることから、登録文化財として活用が難しく、指定文化財としての基準に達しない場合というのは、今後も取り壊さざるを得ない事例が続くのではないでしょうか。



 文化財保護法第60条に基づき、文化庁から都道府県、都道府県から市町村に意見を聞き、かつ都道府県、市町村においても活用することが難しい場合は解体、という流れなんでしょうね。
 ただ、その流れのなかで、国は地方公共団体に対して指定文化財への指定が可能な物件か確認すると思いますが、登録文化財としての活用が難しいから地方公共団体で指定文化財に指定するという指導は不可能ですので、やはり地方公共団体の指定基準に満たない物件は、解体せざるを得ないのかな、と個人的には思います。