指定や登録の対象ではない建物

「萬古陶土」旧社屋、惜しまれつつ解体

萬古焼関係の施設では最も古い大正末期の建物の「萬古陶土」旧社屋(四日市市阿倉川町)が1日、惜しまれながら解体された。

同社は萬古焼メーカー44社が出資して設立。延べ床面積は約250平方メートル。数十年前までは本社として使用された旧社屋は、当時としては珍しい木造2階建ての洋館で、萬古焼を象徴する建物だった。しかし、傷みが激しく、耐震性の問題もあり、取り壊しとなった。

別の企業が2週間前まで研究施設として借りており、萬古陶土役員で水谷幹男・水政製陶所社長は「数少ない木造洋館で大事に使ってきたが、危ないとなれば仕方がない」と残念がった。

建物は、県教委が近代産業遺産のリスト作成のために行った近代和風建築総合調査の対象物件に含まれていた。県教委社会教育・文化財保護室は「地域で近代遺産を見直すきっかけにしようとした調査で、取り崩しは残念」と言い、四日市市教委文化財係も「壊すことは聞いていなかった。文化財としての指定や登録の対象ではないのでやむを得ない」としている。

「萬古陶土」旧社屋、惜しまれつつ解体 : 三重 : 地域 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) 「萬古陶土」旧社屋、惜しまれつつ解体 : 三重 : 地域 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


文化財としての指定や登録の対象ではない?


四日市市例規集を見ると市条例では市指定文化財制度を定めているので、登録は文化財保護法に基づく文化財登録制度のことでしょう。

市の指定基準を定めたものは、例規集からは見つけることができなかったですので、登録文化財の対象という点から少し考察してみたいと思います。

登録有形文化財登録基準


平成8年8月30日 文部省告示第152号
改正 平成17年3月28日 文部科学省告示第44号


建築物、土木構造物及びその他の工作物(重要文化財及び文化財保護法第182条第2項に規定する指定を地方公共団体が行っているものを除く。)のうち、原則として建設後50年を経過し、かつ、次の各号の一に該当するもの
(1) 国土の歴史的景観に寄与しているもの
(2) 造形の規範となっているもの
(3) 再現することが容易でないもの


文化庁 | 文化財 | 種類 | 登録有形文化財(建造物) | 登録有形文化財登録基準

文化庁は、登録文化財の基準として上記のとおり示しています。

「萬古陶土」旧社屋が建設後50年を経過しているのであれば、次の各号のひとつに該当しているかどうかがポイントになっています。さらに、近代和風建築調査では、各号の内容を裏付ける調査を実施します。



A:近代和風建築総合調査の対象物件に含まれていた
C:文化財としての指定や登録の対象ではない


AとCの間にはBという経過が存在するわけなんですが3つほど仮定してみます。



B1:近代化和風建築総合調査の結果、報告に掲載するレベルには到達しない建物であった(あるいは調査するレベルにないと判断して調査対象から除外された)
B2:近代化和風建築総合調査の結果、報告に掲載するレベルの建物であった
B3:調査そのものがまだ未実施だった


仮定B1だとすれば、市の見解どおり。
仮定B2だとすれば、市の見解と近代化和風建築総合調査の結果に食い違いが生じます。
仮定B3だとすれば、市で独自の調査を実施、したのかな。


それ以外のケースとして、市の見解をきちんと理解しないで報道している可能性があるけど、どうなんでしょうねぇ。文化財保護のスタンスと少し異なる市のコメントだけに、気になります。