貸したのか、措置したのか?それだけではない国民健康保険特別会計の議論


委員会で否決された議案が本会議では可決された事例は珍しくはありません。今回気になったのは、国民健康保険税の上昇を抑えるための手立てをどのように議会が考えたか、を新聞記事から想像したハナシ。

国保税引き上げ一転可決

 井原市議会の予算決算委員会は15日、国民健康保険税の1世帯平均18・3%引き上げを前提とした2010年度市国保事業特別会計予算案を賛成多数で可決した。定例会最終日の17日にある本会議では、9日の市民福祉委で否決した国保税を引き上げる条例の一部改正案も可決される可能性が高くなった。

 予算決算委では、国保税条例の一部改正案の委員会否決を受け「歳入の根幹となる税収増が見込めない以上、否決すべきだ」などとする反対意見の一方、今後の国保会計の収支均衡を理由に「原案可決すべきだ」との賛成意見が出た。委員長を除く委員20人による採決の結果、賛成12人、反対8人で可決した。

 3会派は、最大会派「五人会」の5人と第2会派「井原星和会」の3人が全員賛成し、第3会派「後月会」の2人は反対した。

 市の国保会計は、本年度収支が被保険者の所得減などで基金残高の1億7880万円を取り崩しても1億6千万円不足の見込み。市は本定例会に税条例一部改正案や、不足分の一般会計からの「借り入れ」を含む国保会計補正予算案などを提案。8日には「借り入れ」を「繰り入れ」に訂正するなどして関連議案に理解を求めた。市民福祉委では、「市民への説明に時間がかかる」などと異論が出て税条例一部改正案を賛成少数で否決していた。


中国新聞 地域ニュース


市の国保会計は基金残高の1億7880万円を取り崩しても1億6千万円不足の見込みとなる、その不足をどのように補うのか。

国保会計(財政)の基本は、国、県、市、その他保険者の負担と、国保加入者の負担から成立している。基金はそれぞれの負担の余剰分という性質であり、基金を全て取り崩すことは難しいため、国保税を前年度並に押さえるには実際にはもっと大きい額を確保しなければならない。

今回の問題は、歳出見込みが大幅に上昇することにより、国、県、市、その他保険者からは上昇分の負担を求めるものの、国保加入者からの負担は国保税を上げることが難しいため、どのように財源を確保するか、という点である。

会計の基本は国保加入者に負担を求める、つまり国保税の増。

ただし、諸事情により国保加入者に負担を求める(税率を上げる)ことが厳しい場合、財源として先ほどの基金取り崩しという方法もある。ただし、基金埋蔵金ではなく予備費であり、歳出見込みが超過した場合に手当する運転資金なわけで、最初から予備費ゼロとすることは難しい。そもそも他から貰ったお金も積み立ている訳だから、一方的に使うのは難しい。

そうなると、政治的判断で一般会計から国保特別会計に『お金を動かす』こととなる。これは、法律で定めた市の負担率を超えて、市の判断で国保加入者負担の不足分のお金を充当するというもの。議会で議論になった(と思われる)のは、動かすお金の性質。

記事を読む限り、当局が最初に提案したのは国保会計が一般会計から『借り入れ』るという方法。この場合、一般会計は国保会計に『貸し付け』るという方法をとる。当然、平成22年度に歳入不足になるために一般会計からお金を借りるわけだから、お金を返すのは次年度以降、ということであろう。議論の焦点は、平成23年度以降に返済するかということであってしかるべきと個人的には思う。


これに対して、予算委員会内で当局が『訂正』した『繰り入れ』の場合、国保加入者の負担分に対して、市で独自に『補填』するという考え。ただし、財政状況が厳しい中、返済なしの一方的な特別会計の負担というのは当初予算策定の中で当局内で議論されていると思われ、結果として返済を前提とした『借り入れ』という予算措置になったのではないかと思わる。

ただ、不思議に思ったのは、予算委員会で当局が『「借り入れ」を「繰り入れ」に訂正するなどして関連議案に理解を求めた』という点。

借入と繰入では予算の性質も違うし、予算措置の項目も違うので、簡単には訂正できるものではない。
まあ、最初から加入者負担分を増加させず、その財源不足を補うために、一般会計から補填をしようとした、という想像をした。

ということで、誤った場合訂正すれば良いってものではない、という事例(自戒)。


であれば、blogの記事にはしない。

だって、市当局は最初から一般会計から充当するのであれば、国保税の税率改定を行う国保税条例の改定を上程しない筈(少なくとも、大幅な税率改定の可能性は限りなく低い)。


ということは、前段部分の延々と書いてきた部分は逆で、市の一般会計が厳しく、国保税の充当に相当する借入or繰入が難しいため国保税を上昇させる、ということなんでしょうね。


他税を上昇させて国保税に充当するか(一般会計から国保特別会計へ充当する)、国保加入者の負担を増やす(国保税を直接引き上げるか)を政策的に判断した当局案に対し、市民福祉委員会では予算案が否決た。市民福祉委員会での「歳入の根幹となる税収増が見込めない以上、否決すべきだ」という意見における『歳入の根幹となる税収増』がどこを指すのか、記事から読み込むことが難しいかったが、市民福祉委員会は否決することに伴い、国保税上昇分に充当する財源について議論し、予算案を修正する、という視点はあったのでないかと思う。

結果として、市民福祉委員会の否決に対し、本会議では可決の見通しなので、国保加入者の負担を増やすことによって国保特別会計を運営するという方針ということになるだろう。国保の歳出を抑制するための対策を講じるべき、という付帯決議がつくかどうかというのがについて気になるが、歳出抑制についてはやはりいろいろな意見が出ると思われ、付帯決議となるまでは難しいであろう。


市民福祉委員会に否決を受けた予算決算委員会のなかで、歳出に対する国保加入者の負担分を、そっくり国保加入者に転嫁するか、それとも他の方法で補うのか、という議論があったのであれば(当然あるとは思うが)、その部分を記事で読みたかった(議会の議事録が公開されるのであれば、見ようっと)。


社会保障費の増加というのは数年前から予想されていたことだし、この不況も加わり国も地方自治体も政策的な部分も含めて対応が難しくなっている。そういうなかで、議会における議論の状況が垣間見えた、という意味で今日の日記を書いてみた。


政策実現のために起債発行額(市の借金)は前年比22.9%という提案を行い、議会に対して趣旨や今後の見通しを説明しない阿久根市(以下、自主規制)。