最初は移築するつもりだった?

 市民から建物を寄贈された古民家を厚木市が一般公開している事業について、学識経験者らで組織する外部評価委員会が「文化財を壊す契約だ」と市に改善を指摘していることが分かった。50年後に更地で持ち主に返還する内容の契約をしたためで、市は「対応を検討する」としている。

 問題となっているのは、市郊外にある「厚木市古民家岸邸」。1891(明治24)年の建築とされる木造二階建て住宅で、1999年に市の有形文化財に指定されている。98年に持ち主から建物を寄贈され、市が1999年から「当時の生活を色濃く伝える貴重な文化財」として無料で公開している。

 市文化財保護課によると、市は1999年、敷地面積約520坪の土地について、50年たったら更地で持ち主に返還する契約を結んだという。賃料は年間約180万円。

 この契約について、8月の外部評価委員会で定期借地権で契約していることが問題とされた。外部評価委の会議録によると、「文化財を壊す契約で、考えられない。問題だ」と委員が指摘。委員会は「改善」の結論を出した。

 外部評価委は学識経験者や公募市民ら計5人で組織し、19事業の成果を検証。9月に結果を市長に報告している。

 市文化財保護課は「50年たったら壊すという前提ではない。土地の買い取りや移築など、今後対応を検討していく」と話すが、そもそもなぜ定期借地権という方法をとったかについては「今となっては分からない」という。

http://mytown.asahi.com/kanagawa/news.php?k_id=15000000912020003


 建物は市に寄贈されているそうなので、市財産(あるいは教育財産)です。市の財産ですので、市がどうこうしてもよさそうなものですが、市指定文化財に指定されている物件ですので、厚木市文化財保護条例第15条により、現状変更等には制限があります。


 一方、土地は寄贈あるいは市による購入は図られず、定期借地権という方法をとったとのことです。借地借家法第22条に基づく契約で、従来の借地権と異なり、当初定められた契約期間で借地関係が終了するため、その後は更新できません。今回のケースは最初から建物が建っていた土地を借りようとしたと思われるため、一般定期借地権による契約であったと考えられます。契約書に定められた事項にはこんなことが定められているのではないかと思われます。



1 借地権の存続期間を50年とし、更新の請求及び土地の使用の継続による契約の更新並びに建物の築造による存続期間の延長がなく、また、市は、借地借家法第13条の規定による土地上の建物の買取りを請求することができない。
2 市は市の費用をもって土地に存する建物その他市が土地に附属させた物を収去し、土地を原状に復して土地所有者に返還しなければならない
3 2に関わらず、借地権の存続期間満了X年前までに、借地権の存続期間満了時に本件建物を無償で譲り渡すべきことを、市に対して請求することができる。
4 Y年毎に、以下に掲げる方式により算定した額に地代を改定することを請求することができる。改定地代の年額=( 従前の地代の年額− 従前の地代決定時の公租公課の年額)× 変動率+ 地代改定時の公租公課の年額



 このあたりを『知った』上で契約しているのであれば、文化財保護として何が必要であったか説明できる、気がするのはワタシだけですかね?
 反対に、「今となっては分からない」という担当課のコメントを見ると、なにかしらの事情で建物の寄贈があったときに土地が購入できず、表向きは定借法で借り、ほとぼりが冷めたころに買いとる事を考えていたのかもしれません。もっとも買い取る前に結んでいた契約が現状復帰にして返還というのは、契約を結ぶことに無理があるのではないでしょうか。


 解約条項をどのように定めたか、ということが今回の件で当方がもっとも気にしていることです。50年より以前に移築をした場合、50年間借地する権利は放棄できますが、50年間借地代を支払う義務は残っています。
 「50年たったら壊すという前提ではない。土地の買い取りや移築など、今後対応を検討していく」としているので、しっかり契約に含まれていると思いますが、『書いていない』場合の対応(契約の定めのない場合は甲乙が協議)は、あまり想像したくはありませんね。


 「今となっては分からない」という担当課のコメント、長期間継続する契約なので契約に関する文書は保管されているハズ。誰がどんな考え方で契約方法を決めたかはわかるハズだよなぁ。謝罪の基本として、『わからない』に至る経緯がを説明しなければならないですし(新聞報道ではそこまで書かない)、聞き手も納得できないため、解決を図る際に支障とならなければいいのですが、と他自治体の心配をしても(汗


 まさか、譲渡所得に対する課税を理由に借地をした、ということはないと思いますが。